自筆遺言証書とは遺言者自身が書く遺言書のことです。
民法では「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と定められています。
法律的に有効な自筆遺言証書にするためには、法律で定められた要件を満たさなければなりません。
今回は、必要な要件を詳しく解説します。
自筆証書遺言作りに失敗しないためのポイント
●全文を遺言者本人が自筆する
遺言書の全文について遺言者本人が自筆したものでなければなりません。
例えば他の人に代筆してもらったり、パソコンで作成したりした遺言書は自筆証書遺言とは認められないので注意が必要です。
使用する用紙や筆記具にルールはありません。
また、縦書き、横書きどちらでも結構です。
●作成した年月日をキチンと記載する
遺言書を作成した年月日がキチンと入っていなければなりません。
作成した日が分からない自筆証書遺言は無効となります。
また、「平成30年2月吉日」のように日付が特定できない書き方をすると無効になってしまうので、注意が必要です。
●遺言者本人が署名と押印をする
遺言者の自筆の署名と押印が必要です。
押印については実印でなく三文判でも認められますが、遺言者の意志であることを証明するためにも実印で押印するのがよいでしょう。
●遺言書が2枚以上になったら、契印を押印する
遺言書が2枚以上になったときは、ホチキスなどで綴じて契印・割印を押印します。
もし契印がないと印鑑のないページが偽造・変造されても分からなくなってしまうため、これを防ぐための方法です。
●遺言の内容は分かりやすく具体的に書く
特に財産については正確に書くことが求められます。
例えば「自宅は長男に相続させる」と書いた場合、家を指しているのか土地を指しているのか、よく分かりません。
不動産については「○○市○○二丁目3番地 宅地 500平方メートル」のように登記簿に記載されているとおりに書くことが必要です。
また、銀行預金などの場合は、「○○銀行 ○○支店 普通口座 口座番号123456」のように記載することが求められます。
●訂正したら訂正印を押印する
遺言書の内容を訂正したら、「○字加入○字削除」などと変更した旨を付記して押印しなければなりません。
これがないと、誰かが勝手に変更した可能性が疑われ、法的に有効な変更とは認められません。
ですから訂正箇所があれば、全て書き直すのも良い方法です。
自筆証書遺言の問題点
自筆証書遺言は遺言者本人が書いて署名・押印するだけなので、手軽に作成することができるうえに費用もかかりません。
しかし、いくつかの問題点があります。
●無効な遺言書になる可能性がある
今回、有効な自筆証書遺言にするための要件を紹介しましたが、これらのうち一つでも欠けていたら、無効な遺言書になってしまいます。
要件をすべて満たしたつもりでも、勘違いやうっかりミスで無効な遺言書となることもあるのです。
●発見されないことや紛失の恐れがある
自筆証書遺言は、遺言者自身が保管するケースがほとんどでしょう。
すると、遺言者が亡くなっても遺言書を見つけてもらえない可能性もあるのです。
最悪の場合、故意または過失で捨てられてしまうこともあります。
●家庭裁判所の検認が必要
相続人が自筆証書遺言を見つけても勝手に開封することはできません。
家庭裁判所の検認手続きを受ける必要があります。
検認手続きを受けるためには戸籍謄本など必要な資料を集めて、家庭裁判所に申し立てなければなりませんし、相続人全員が立ち会わなければならないので、とても手間がかかります。
公正証書遺言を検討してみましょう
このように自筆証書遺言にはいくつかの問題点があることから、当事務所では「公正証書遺言」をおすすめしています。
公正証書遺言であれば、裁判所の検認手続きが必要ないので、相続人に手間をかけることもありませんし、その後の相続手続きもスムーズに進むことでしょう。
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